まゆずみ眼科医院の診察室

眼が痛い、という訴えで眼科を受診する患者さんも少なくありません。

 

「痛み」といってもズキズキ、ギュー、チクチク、ゴロゴロなどいろいろありますし、原因も「眼精疲労」「ドライアイ」「眼の炎症」「急性緑内障発作」など多岐にわたり、 複数の状態が痛みの原因となっていることも少なくありません。実際のところ、眼が痛いのか、前頭部の痛みなのか、区別できないことも多いです。

今回取り上げるのは、「片頭痛」です。頭痛にはいろいろありますが、「片頭痛」が特に眼科と縁がある理由は頭痛の前後に眼の症状をともなうことがあるからです。 片頭痛の患者さんは女性に多くみられ、頭痛のほかに吐き気を伴ったり、音や光に敏感になることもあります。

片頭痛の患者さんで眼科を受診なさる方の多くは、「ぎざぎざした輝くような光の模様」がしばらく見えた、と訴えます。これは「閃輝暗点」と呼ばれる前兆(まえぶれ)です。「前兆をともなう片頭痛」の場合、「閃輝暗点」のあとに頭の片側がずきずき痛みます。

 

 

片頭痛全体の中では「前兆をともなう片頭痛」は約20%程度です。この前兆のみで終わってしまうもの、つまり「前兆のみで頭痛を伴わない片頭痛」もあり、眼科を受診する患者さんの多くはこのタイプであり、頭痛が自覚しても軽度なことが多いようです。なお、「閃輝暗点」が眼の症状としては有名ですが、そのあとで、一部が暗く見えたり(比較暗点、絶対暗点)、視野狭くなることもあります。

また、「片頭痛」の中には「前兆をともなう片頭痛」「前兆をともなわない片頭痛」のほかに「網膜片頭痛」があります。これは片眼の視覚障害や一時的な失明を伴うものです。

 

 

一方、20-40代の男性に多くおこる、「目の奥がえぐられれるような激しい痛み」を訴える頭痛は「群発頭痛」と呼ばれ、眼が充血し、涙や鼻水が止まらないこともあります。この「群発頭痛」は眼科を受診することはあまりないようです。

 

 

 


 

片頭痛についてはいずれ「眼の病気」のページに追加する予定でしたが、今回、先にこのブログで、と思ったきっかけは下の論文です。

The relation between migraine, typical migraine aura and “visual snow”.

Schankin CJ1 Headache. 2014 Jun;54(6):957-66.

この“visual snow”というのは昔のテレビの砂嵐のような小さな光の点滅が視野全体に広がる症状がずっと続く、という症状です。それ以外の眼の症状としては反復視(残像)や青視症、光視症、夜盲などがあり、耳鳴りが半数以上の症例に合併します。

この論文の内容は以下の通り。

1) ”visual snow”の患者120名のうち、70名が片頭痛を、37名に閃輝暗点を合併

2) 片頭痛持ちは反復視、羞明、青視症、閃輝暗点、光視症、夜盲の各症状と伴いやすい、閃輝暗点のみ場合は光視症の出現と相関

3) 17名にFDGーPETを施行したところ舌状回、小脳前葉の一部で代謝亢進

 

 

同じ著者による別の論文では対象がネットでの調査を行った270名が含まれています。

‘Visual snow’ – a disorder distinct from persistent migraine aura.

Brain. 2014 May;137(Pt 5):1419-28.

 

1) 1/4の患者では気が付いたらすでに症状があった、残りの患者の発症年齢の平均は21+/-9歳

2) ”visual snow”の自覚症状は少しずつ悪くなる場合がある一方、一部患者では自覚症状の変化がない

3) 主な合併症状は片頭痛 59%、閃輝暗点を伴う片頭痛 27%、不安や抑うつ

4) 片頭痛に対する治療は無効

 

筆者も述べているように、2つの論文ともセルフチェックをし、コンタクトしてきた患者さんを対象している結果なので、かなりバイアスがかかってはいると思いますが、どのような症状なのかは十分把握できると思います。

 
Eye on Vison これらの調査を行った団体のサイトです(英文)。
 

今のところ”visual snow”は「持続する閃輝暗点」ではなく、という独立した疾患または症候群であろう、ということくらいしかわかっておらず、有効な治療法はありません。ただ、眼科的な検査で異常が見つからず、典型的な飛蚊症や光視症と分類できない症状の場合、この”visual snow“の可能性を検討してもよいかもしれません。

 


1年以上前に登録した記事ですが、その後もたまに問い合わせをいただきます。近いうちに最近までに発表された論文などもまとめて紹介するかもしれません。

“visual snow”となんとなく扱われ方が似ているな、と思うものに 「不思議の国のアリス症候群」というものがあります。

10年ほど前に頭痛のことをネットで検索していた時にはすでに話題になっていたので、目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。最近、眼科の学会誌でようやく片頭痛の随伴症状として取り上げられましたが、ほとんどの眼科医は知らない/スルーしていると思います。眼科の場合、症状は「自覚症状」のみで、医者がみてわかる「他覚所見」を伴わないことも少なくありません。問診を聞くと「なるほど、そういう症状なのね」と思っても、それを確認するすべがないのです。

 

 

眼科、神経内科、精神科、いずれの科で診断、治療を行ってもらえるか、はっきしりませんが、大事なのはじっくりと症状を説明し、医師に理解してもらうこと、と思います。

上記のBrainに掲載された論文はどなたでも閲覧できます。プリントアウトして持参するとよいかもしれません。

お問い合わせは    027-388-8461