黒内障

片目が一時的に見えなくなった!そんなときに疑うべき疾患は「黒内障(一過性黒内障)」です。

 

黒内障とは

「黒内障」では、一時的に片目が見えなくなった、「真っ暗になった」という症状が出現します。そして、しばらくすると、通常は数秒から数分間で、また見えるようになります。

このような状態は、目の病気ではなく、首の太い血管(頸動脈)の狭窄を疑うべきであり、「一過性黒内障」と呼ばれます。

高血圧や糖尿病、高脂血症など生活習慣病(昔でいう成人病)などの原因で動脈硬化が進行し、心臓と脳をつなぐ頸動脈(主に内頚動脈分岐部)が細くなることがあります。血圧の低下などの原因で脳への血流が減少したり、血の塊が脳のほうへ飛んでいき、目を栄養する血管の流れが悪くなると一時的に目が見えなくなります。

「朝起きたら片目が見えない、しばらく様子をみていても改善しない」という場合は網膜動脈閉塞症と呼ばれる、眼科的に緊急を要する疾患が疑われます。すみやかに眼科を受診してください。

 

黒内障が疑われるときに必要な検査

一過性黒内障が疑われた場合、まず行うべき検査は頚動脈のチェックです。具体的には頸部MRAまたはエコー、頭部MRI/MRAです。

頸動脈に狭窄がある場合、側副血行路の評価、必要に応じてSPECTなどの脳血流検査も行われます。

なお、目を栄養する眼動脈は内頚動脈の枝ですが、非常に細い血管であり、MRAでの評価は非常に困難です。顔面を栄養する外頚動脈の分枝からの血行が認められる場合があります。

血管造影でも眼動脈の描出は困難であり、網膜面の血流はchoroidal crescentとして描出されます(外頚動脈、内頚動脈のいずれから血流を受けているかの判断に有用)。
引用:脳・脊髄血管造影マニュアル 宮坂和男 著

 

黒内障の治療

一過性黒内障は一過性脳虚血発作(TIA)に分類される症状です。したがって、脳梗塞の発症を防ぐことを目的に、抗血小板剤や抗凝固剤の内服治療が行われます。

頸動脈の狭窄の程度が強い場合、外科的手術(ステントや頚部内頚動脈内膜剥離術など)の適応となることもあります。

 


「黒内障」と鑑別が必要な眼の病気

黒内障と眼の病気の一番大きな違いは症状が一時的なものかどうか、です。

黒内障のように、一時的に目が見えなくなってもじきに症状が改善する場合は「血流が一時的に悪くなっていた」がその後にもとにもどった状態ですので、見え方に影響する血管自体は閉塞しておらず、再発の予防が重要です。

一方、完全に見えない状態が続いている場合はすでに目の動脈の閉塞が完成してしまっている状態で、前述の「網膜動脈閉塞症」にあたります。完成してしまった血管閉塞は発症から2-3時間以内の処置が行わない場合は回復困難です。したがって、その後の合併症の予防を中心に治療が行われます。詳細は、別ページで解説します。

 

症状から推測する眼の血管障害

症状により、疾患をある程度推測できることもあります(あくまでも目安)。

片目が急に見えなくなった

→ しばらくすると治った 「黒内障」
→ 様子を見ていても改善しない 「網膜動脈閉塞症」

なんとなく片目の、「視界の上半分、下半分だけ」見えにくくなくなってきた

→ 「虚血性視神経症」

両眼の一部が部分的に見えない(両眼とも同じように見えない)

→ 急に症状が出現した 「脳卒中」

→ 少しずつ進行している 「脳腫瘍」など

*詳細は頭蓋内疾患による視野障害をご覧ください。

 

片目が部分的に見えにくい(両眼のこともあります)

→ 緑内障

*詳細は緑内障をご覧ください。

 

 


黒内障?白内障?

黒内障の名前の由来は瞳孔が黒いまま目が見えなくなる状態であるためです。

耳にすることも多い「白内障」は「目(瞳孔)」が白く見えことに由来しています。「緑内障」という病気もありますね。