ここで紹介するMCレンズは、「眼鏡を作成する際に特殊なレンズを指定」する、というものです。

医院で発行する眼鏡の処方箋は、レンズ指定があること以外は通常の眼鏡の処方とまったく同じですので、病院で支払う医療費も普通の眼鏡と同額です。ただし、眼鏡作成に必要なフレーム、レンズ代は最近の、ショッピングモールで販売されている格安メガネに比べると割高になります。

MCレンズで期待できる効果は、近視進行の「抑制」です。多少なりとも近視の進行が抑えられたら、という「プラスα」の効果に意義を感じる方にのみ、おすすめします。後述するように、確実な効果を保証するものではありません。したがって、通常の診療の中では、患者さん側から尋ねられない限り、医師から積極的にお勧めすることはありません。これは小児に対するオルソケラトロジーについても同様です。

遠視性デフォーカスの抑制を目的としたデザインのレンズ(カールツィアス社のMyovison、日本では未発売)を利用した日本国内での多施設研究ではよい結果が得られなかったようです。MyovisonとMCレンズが目的もデザインも異なりますが、同じように眼鏡を利用した方法である以上、効果はそれなり、という可能性がでてきました(2016.7追記)。

近視のお話

近視とはどんな状態?

「近視」は外の景色が目の奥(網膜)の手前で像を結んでしまう(ピントが手前にある)状態で、網膜に映る像はぼやけています。日本人に多く、学年が上がるにつれ近視になる割合はあがり、高校生くらいになると半数以上が近視になるといわれています。

近視の種類や原因などについて、詳しくはこちらをごらんください。

近視のお話
近視はピントが目の奥より手前にあります。

近視はピントが目の奥より手前にあります。

MCレンズってどんなもの?

MCレンズは近視の進行を抑制に効果があります

カールツァイスビジョン社のMCレンズ“Myopia Control Progressive Lens”は、学童期の近視進行を抑えるために特別に設計された、世界初の眼鏡レンズです。長時間の細かい作業のピント調節など眼への負担を軽減し、手元作業時の緊張を緩和します。児童用の小さいフレームを考慮して設計されている為、快適な掛け心地を得ることができます。

MCレンズが近視進行の抑制に効く理由

近視の進行を左右する環境要素は手元での作業です。通常の状態において、至近距離にあるものを見る場合、眼の筋肉を使ってピントを合わせようとします。この過程は“調節”と呼ばれています。至近距離を見る時に必要なこの“調節”を手助けすることで、近視の進行を抑制することが可能だと考えられています。この方法を取り入れたのがMCレンズです。

MCレンズの効果

MCレンズの効果は?

MCレンズは近視進行の抑制に一定の効果があることが実証されています。

MCレンズを使用した近視進行抑制の実証研究が4年間にわたって岡山大学眼科で行われました。その結果、通常の単焦点眼鏡に加えて、MCレンズのほうが、15%近視の抑制に有効であったと結論づけられました。

MCレンズの効果

MCレンズご使用の目安

 MCレンズご使用の目安

7歳頃を目安に近視が進行し始めたら装用を開始してください。

近視の休息な進行は成長期と重なります。7歳頃から始めて、18歳頃までは抑制を続けましょう。

特に病的近視の場合、年少時から近視が進行しやすいので、MCレンズの使用の有無に係らず早めに矯正を始めましょう、ということです。


よくあるかもしれない質問

  • MCレンズはすべての近視児童に効果がありますか?

    MCレンズは子ども用に特別に設計されていますので、全ての近視児童で利用可能です。
    近視の進行を抑える効果には個人差があります。

    オルソケラトロジーの場合、「中等度の近視まで、軽度の乱視」という制限があります。治療開始の段階で近視が強い場合、治療中にオルソケラトロジーの適応から外れる(正確には利用できるレンズがなくなってしまう)可能性も考慮しなければなりません。この点ではMCレンズのほうが、優れているといえるかもしれません。

  • MCレンズで近視は治りますか?

    近視を「なおす」のではなく、近視の進行抑制です。

    「近視が治った」というのは仮性近視もしくは調節緊張による部分が改善した、ということです。近視はある程度進む傾向があります。したがって、いかに近視の進行を抑えるかが重要であり、その手段の一つがMCレンズです。

  • 近視がどの程度進行した時にMCレンズを使用し始めるのが効果的ですか?

    MCレンズは近くのものを見るときの助け、眼の緊張を和らげることによって近視の進行を抑制するよう設計されています。近視が判明したら、なるべく早い段階で使用し始めてください。

    学校検診で視力が悪いと指摘され、眼科を受診した場合、近視の度数と調節緊張の可能性が検査されます。もし近視が強く、進行の可能性大と判断された場合、メガネの使用をお勧めします。この段階でMCレンズの利用を検討してください。

  • MCレンズは一日何時間くらい装用すればいいですか?

    MCレンズは継続して装用することで近視が進行しやすくなる要素を軽減するというレンズですので、起きている間は常時装用してください。授業中だけ使用する、というった掛け外しを頻繁に行うと効果が出ない場合があります。

  • MCレンズをかけたまま運動しても大丈夫ですか?

    激しいスポーツをする場合は、外した方が安全です。これは普通のメガネも同様です。

  • レンズのかけ替えサイクルはどのくらいですか?

    通常、学童期の児童のメガネは1-2年くらいごとにメガネを作り直すことが多いです。少なくとも年に2回検診を受けるようにしてください。

    近視の度数、視力、眼軸長などを定期的にチェックし、近視の程度を評価します。

  • MCレンズにはUVカット機能はついていますか?

    はい、MCレンズには標準でUVカット機能がついています。

  • MC?マルチコート?

    いいえ、それは”multi coated”つまりマルチコートです。MCレンズは”Myopia Control Progressive Lens”の略です。
    MCレンズの取扱店は登録制です。普通のメガネ屋さんのマルチコートレンズと間違えないようにしてください。

  • MCレンズ、どこのサイトも同じような説明なのはどうして?

    説明も絵も似通っているのは、多くのサイトでレンズメーカーの資料がそのままに転記されているためです。当院でもいずれ、独自の内容で内容に記載を改めていきたいと思います。

  • ネットに遠近両用メガネで疲れをとっても仕方がないと書いてありました

    そもそもMCレンズは通常の遠近用のレンズと度数の加入デザインが大きく異なります

    あくまでも近視の進行の原因の一つと考えられている、調節ラグを軽減することを目的としています。単純に遠近両用メガネで疲れをとることを目的としているものではありません。

  • 取扱うメガネ店が制限されているのはなぜ?

    眼科医としては、近視抑制の一手段として良いと思われる方法を紹介し、利用する手段を提供するだけです。

    メガネの処方箋料が高くなるわけでもありませんし、病院側のメリットは患者さんによろこんでもらえるかもしれない、ということだけです。取扱店が制限されているのは眼科医側の事情ではありません。

  • どんなメガネ・フレームでも使えるの?

    通常の単一焦点のメガネ用レンズと異なり、手元用の度数が加入してあるデザインのレンズですので、極端に細長いレンズを利用するメガネ・フレームは利用できません。

    もっとも「レンズ枠が視界に入るのでうっとおしい」というメガネ固有の欠点もありますので、鼻かけメガネ(レンズの上から覗き見ている状態)を避けるためにもレンズの大きさをしっかり確保できるデザインのほうが子供向きではないかと考えています。